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「中編」
Secret Code

Secret Code 8

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「ここは…?」

直樹の腕に抱かれ魂此処にあらずと言うほど放心した琴子は、直樹が片手で器用に門扉を開けるまで自分がどこに連れてこられたのか気づいていなかった。
門扉がたてるきぃと金属が軋むかすかな音にふっと我に返った琴子は、直樹の腕の中から大きな白い建物を振り仰ぐ。
そこは見覚えのある建物で、琴子は目を丸くした。


**********


「あの…?っ!」

しゅるしゅると琴子の華奢な足首が琴子の前に跪くように腰を落とした直樹によって器用に白く覆われていく。
時折様子を見るように動かされる足首は、琴子が思っていた以上の傷みをもたらしたが、腫れがすっかり白い包帯に覆われる頃には多少動かされても痛むことはなかった。

「あの…、入江…刑事?」

琴子の声に反応して顔を上げるが、直樹は何も言わず外れないようにテーピングを施すと器具を片付けだした。
直樹に手によって下ろされた寝具は紺色のカバーがかけられていて、肌触りだけでも高級と分かる。
覚悟していた煎餅布団とは違う肌触りに戸惑いながら、琴子は痛めた足を庇って立ち上がった。

「あの…。」
「…。」

広い背中に声をかけるが、やはり返事は返ってこなかった。

「あの…入江…さん?あの、聞こえてませんか?入江さん。入江さーん。…んもぉ、なんなのよ!入江くん!」

聞こえなかったのかと続けて声をかけるが直樹は反応せず、琴子はだんだんむっとしながら直樹に呼びかけた。
応えるまでと何度か呼び続けるが応えては貰えず、半ばやけになって頬を膨らませるとあらん限りの大声で呼んだ。
そのかいもあってか、ようやく振り向いた直樹は嫌そうに眉をしかめていた。

「…しつこい、なんだ?」

不機嫌そうではあるが、切れ長の整った目で見られて不覚にも琴子の心臓は大きく高鳴る。
それを誤魔化すように琴子はひとつ咳払いして直樹に向き直った。

「あの、あなたがあそこにいたのは私の手紙を読んだからですよね?」
「手紙?」
「コトリーナって書いてあったでしょ!」
「…ああ、あったな、そういえば。」
「あったなって!」

予想していたのとは違う答えに琴子の口があんぐりと丸く開かれた。

「あんまりにひどい文章で忘れてた。」
「んまぁ!」

悔しさに琴子の眉がよる。
それを見て直樹はふっと口元を上げたが、直樹が何か言う前に琴子の目が今度は零れ落ちんばかりに大きく見開かれた。

部屋に置かれた机の上には、何枚かの写真が置かれている。
それらは全て件の大皿が写されていた。


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