「中編」
Secret Code
Secret Code 7
「んんっ!」
口を塞がれくぐもった声をあげながら、琴子は自分を押さえ込む腕から逃れようと小さな両手を自分の口元にある手に添えて抵抗した。
それでもごつごつとした骨っぽい手は離れず、腰にまわされた腕で一層強く閉じ込められる。
ぐっと押し付けられる熱に自分よりもはるかに大きな体躯を感じながら何とかしなければと琴子が手足をばたつかせると「静かにしろ」と背後から低く声をかけられた。
耳にかかる吐息にびくりと肩を跳ねさせると思わず息を潜める。
一拍置いて琴子が引き込まれた植え込みの前を通る、汚れて履き潰されたスニーカーが見えた。
先ほど廊下で出会った男がいまだ琴子を探しているようで、時折イラついた男の声が頭上から降ってくる。
その度に琴子の体は情けないほどに震えてしまい、さっきは恐ろしかった背後の体温に思わず縋ってしまいそうになった。
実際押しとどめていたつもりが少しでも住人に見つからないようにとしていたらしい。
琴子の体は背後の男の腕の中で小さくなるようにぴったりと密着し、男もそれを黙って受け入れていた。
「諦めたみたいだな…。」
どれだけ時間が経ったのか。
男の声に我に返った琴子は、男の顔が思った以上に近かったことに驚き今度こそ男の手を振り払って振り返った。
状況が状況とはいえ、仮にも若くか弱い女性である自分の口を無遠慮に押さえつけていた男に、一言文句を言ってやらなければと意気込んで振り返る。
が、男の顔を見た途端琴子の言葉は不満を訴えることなく、変わりに短い悲鳴が小さな彼女の唇からこぼれた。
「なんだ?」
「い、入江くん!」
直樹に予告状を出すにあたり、琴子は警視庁に直接潜り込み、直樹のことを調べていた。
経歴から言って少し上だと思っていた直樹が同年齢だと知り、ついつい勝手な親近感を覚えて影で入江くんと呼んでいたのをうっかり本人の前で言ってしまった琴子は頬を赤く染めながら少しでも直樹から距離をとろうとした。
いまだ直樹の腕の中にいたため逃げ出そうと腰を上げる。
「あ、えっと…っ!」
じりじりと後づさるものの、直樹からそう距離を置くこともなく、琴子はまたぺたりと尻餅をついた。
動きやすさを重視したショートパンツ。
その軽装から伸びるまっすぐな細い足。
琴子はその付け根、足首を押えながら痛そうに眉根を寄せた。
「…どうした?」
「なんでも…。」
直樹から見えないようにじりじりと足を小ぶりな尻に隠そうとするものの、動きの鈍い琴子では上手くいかず、直樹に簡単に足を押さえられてしまった。
「…腫れてんじゃねぇか。」
「ん…。」
そっと、先ほどまでとは違って壊れ物を扱うように直樹は琴子の足に触れた。
その手は驚くほど優しく琴子の心臓は壊れそうなほど大きな音を立てる。
きっと直樹はあの手紙を読んで琴子を捕まえるために此処にいるのだろうが、まっすぐな目を見ていると変な誤解をしそうになる。
結局目標は達成できなかったが、さっき他の男に捕まるかも知れないと思ったことに比べれば感謝してもいいくらいだ。
ぎゅっと覚悟して琴子が硬く目をつぶると琴子のひざの下にすっと腕が差し入れられ、琴子の体は軽々と直樹に持ち上げられた。
「きゃっ!」
「…静かにしろ。」
耳元で騒がれて直樹の眉間がまた深い皺を刻む。
「お、おおおお姫様抱っこ。」声にならない声でそれだけ呟くと、琴子は自分の立場も忘れ、思わず直樹の広い胸に顔を埋め、その胸元のシャツを掴んだ。
文句を言おうかと思ったものの、耳まで赤く染めしおらしく黙り込んだ琴子に直樹は溜息を吐くだけに留めてそっと植え込みの影から抜け出した。
人の目を盗み直樹が琴子を抱いて鴨狩邸を後にすると、遠くからサイレンの音が響いた。
ずいぶんご無沙汰しておりました。
相変わらず仕事でばたばたとしておりましたが、健康面では問題なく、私生活で時間をとられていました。
他にゲームにはまっていたということもあります。
きちんとご挨拶していない間、更新がないにもかかわらずたくさんの拍手を頂きありがとうございました!
私生活の問題も一段落いたしましたし、引きこもり気味の私には外出がつらい季節にもなって参りましたので、また更新を頑張れるようにいたします。
相変わらずのぐだぐだっぷりですが、これからもよろしくお願いいたします。
口を塞がれくぐもった声をあげながら、琴子は自分を押さえ込む腕から逃れようと小さな両手を自分の口元にある手に添えて抵抗した。
それでもごつごつとした骨っぽい手は離れず、腰にまわされた腕で一層強く閉じ込められる。
ぐっと押し付けられる熱に自分よりもはるかに大きな体躯を感じながら何とかしなければと琴子が手足をばたつかせると「静かにしろ」と背後から低く声をかけられた。
耳にかかる吐息にびくりと肩を跳ねさせると思わず息を潜める。
一拍置いて琴子が引き込まれた植え込みの前を通る、汚れて履き潰されたスニーカーが見えた。
先ほど廊下で出会った男がいまだ琴子を探しているようで、時折イラついた男の声が頭上から降ってくる。
その度に琴子の体は情けないほどに震えてしまい、さっきは恐ろしかった背後の体温に思わず縋ってしまいそうになった。
実際押しとどめていたつもりが少しでも住人に見つからないようにとしていたらしい。
琴子の体は背後の男の腕の中で小さくなるようにぴったりと密着し、男もそれを黙って受け入れていた。
「諦めたみたいだな…。」
どれだけ時間が経ったのか。
男の声に我に返った琴子は、男の顔が思った以上に近かったことに驚き今度こそ男の手を振り払って振り返った。
状況が状況とはいえ、仮にも若くか弱い女性である自分の口を無遠慮に押さえつけていた男に、一言文句を言ってやらなければと意気込んで振り返る。
が、男の顔を見た途端琴子の言葉は不満を訴えることなく、変わりに短い悲鳴が小さな彼女の唇からこぼれた。
「なんだ?」
「い、入江くん!」
直樹に予告状を出すにあたり、琴子は警視庁に直接潜り込み、直樹のことを調べていた。
経歴から言って少し上だと思っていた直樹が同年齢だと知り、ついつい勝手な親近感を覚えて影で入江くんと呼んでいたのをうっかり本人の前で言ってしまった琴子は頬を赤く染めながら少しでも直樹から距離をとろうとした。
いまだ直樹の腕の中にいたため逃げ出そうと腰を上げる。
「あ、えっと…っ!」
じりじりと後づさるものの、直樹からそう距離を置くこともなく、琴子はまたぺたりと尻餅をついた。
動きやすさを重視したショートパンツ。
その軽装から伸びるまっすぐな細い足。
琴子はその付け根、足首を押えながら痛そうに眉根を寄せた。
「…どうした?」
「なんでも…。」
直樹から見えないようにじりじりと足を小ぶりな尻に隠そうとするものの、動きの鈍い琴子では上手くいかず、直樹に簡単に足を押さえられてしまった。
「…腫れてんじゃねぇか。」
「ん…。」
そっと、先ほどまでとは違って壊れ物を扱うように直樹は琴子の足に触れた。
その手は驚くほど優しく琴子の心臓は壊れそうなほど大きな音を立てる。
きっと直樹はあの手紙を読んで琴子を捕まえるために此処にいるのだろうが、まっすぐな目を見ていると変な誤解をしそうになる。
結局目標は達成できなかったが、さっき他の男に捕まるかも知れないと思ったことに比べれば感謝してもいいくらいだ。
ぎゅっと覚悟して琴子が硬く目をつぶると琴子のひざの下にすっと腕が差し入れられ、琴子の体は軽々と直樹に持ち上げられた。
「きゃっ!」
「…静かにしろ。」
耳元で騒がれて直樹の眉間がまた深い皺を刻む。
「お、おおおお姫様抱っこ。」声にならない声でそれだけ呟くと、琴子は自分の立場も忘れ、思わず直樹の広い胸に顔を埋め、その胸元のシャツを掴んだ。
文句を言おうかと思ったものの、耳まで赤く染めしおらしく黙り込んだ琴子に直樹は溜息を吐くだけに留めてそっと植え込みの影から抜け出した。
人の目を盗み直樹が琴子を抱いて鴨狩邸を後にすると、遠くからサイレンの音が響いた。
ずいぶんご無沙汰しておりました。
相変わらず仕事でばたばたとしておりましたが、健康面では問題なく、私生活で時間をとられていました。
他にゲームにはまっていたということもあります。
きちんとご挨拶していない間、更新がないにもかかわらずたくさんの拍手を頂きありがとうございました!
私生活の問題も一段落いたしましたし、引きこもり気味の私には外出がつらい季節にもなって参りましたので、また更新を頑張れるようにいたします。
相変わらずのぐだぐだっぷりですが、これからもよろしくお願いいたします。
- 関連記事
-
- Secret Code 8
- Secret Code 7
- Secret Code 6
スポンサーサイト
~ Comment ~