「中編」
Secret Code
Secret Code 3
「…またお前か。」
頭上からの重みに耐えられず、男は琴子を抱えて尻餅をついた。
溜息を吐きながら、男はキッと琴子を睨みつける。
聞き覚えのある溜息にこわごわと琴子が様子を伺うと、そこには入江家で見た男がいた。
腰に回る男の腕に琴子の頬が赤く染まる。
痛ぇ…と眉を潜める男、直樹に琴子は慌てて頭を下げるとすっと離れた。
「すみません!大丈夫ですか?」
手を差し出すと直樹は不機嫌そうにしながらもその手を掴んで立ち上がる。
立ち上がった直樹はやはり琴子よりもかなり背が高く、琴子はどきどきしながら彼を見上げた。
彼の方は琴子を気にすることなく服についた埃を払っている。
改めて明るい日の中で見る彼はこんな不公平があるのかと言うほど整った顔をしていた。
ずっと見ていたい気がするが、琴子が出てきた窓からは姉妹の騒ぐ声が聞こえる。
名残惜しさを振りきり、「本当にすみませんでした!」と琴子は頭を下げた。
もしかしたらと希望も持っていたが、泣く泣く背を向けたにも関らず、背後から声がかかることはない。
追いつかれるかも知れないこともあり、琴子は駆け足でその場を離れた。
**********
「お姉ちゃん、警察!」
「うるさいわね、今からかけるわよ!」
きゃーきゃーと騒ぐ綾子を制しながら、裕子はコードレスの子機を手に取った。
110番にかけるべくダイヤルを押したところでそれを遮るようにチャイムが鳴る。
どうやら相当雑な犯人だったらしく、被害状況を確認しようとしたものの、無くなったものはなく、ただただ散らかされただけだった。
それでも裕子が大切にしていたコレクションがなぎ倒されていたこともあり、苛々していた裕子は乱暴に電話を置いて大股で設置されたインターフォンへと向かう。
小さな画面には男が一人で映っていた。
スーツ姿で、宅配などとは明らかに様相が異なる男に、裕子の秀麗な眉が寄る。
「…どなた?」
苛々を隠そうともしない裕子の声にも男はひるまなかった。
上方に設置されたカメラに顔を晒すように男は頭上を見る。
その顔はとても美しかった。
優雅な所作で羽織った背広の内ポケットに男が手を入れる。
目を奪われるようにただその光景を見つめていると、その手が黒い手帳のような物を握って再び裕子の視界に入った。
縦長のそれを男は開いて画面に掲げてみせる。
「警察です。少しお話を伺いたいのですが、お時間はよろしいでしょうか。」
黄金に輝く紋章には確かにpoliceの文字が輝いている。
偶然とは言えタイミングのいい訪問に、裕子は妹と目配せして玄関のロックを解除した。
「どうぞ、今お迎えに向かいますので。」
「警視庁の入江直樹と言います。」
手渡された名刺に、裕子は素早く視線を走らせる。
警部と書かれた肩書きの下にはゴシック体で確かに入江直樹と印字されていた。
警察の体系には詳しくないが、この若さで警部とは中々のものだろうと裕子は思う。
互いに軽く頭を下げて向き合うと、直樹が裕子の肩越しに室内を見て眉をひそめた。
「…空き巣ですか?」
「ええ。今警察に通報しようとしたところです。」
「被害状況はなにか?」
淡々と聞く直樹に、裕子も冷静に状況を振り返った。
「予定より帰宅が早かったので失敗したようでしたよ。」
「中を拝見しても?」
裕子は頷くと扉に身を寄せるように道をあけると、直樹が玄関内へと入っていく。
やがてパタンと扉が閉まると、植え込みががさがさと音を立てた。
すごいノリノリで書いております。
完全なる自己満足です。
今更ながら一話に前書きが必要ではなかったかと思うのですが…。
…ついて来て頂ける方だけついてきて頂ければ嬉しいです。
警察云々のことに関しては、推理小説好きなだけなので、雰囲気で誤魔化している部分がほとんどですので、どうぞ目をつぶって下さい。
頭上からの重みに耐えられず、男は琴子を抱えて尻餅をついた。
溜息を吐きながら、男はキッと琴子を睨みつける。
聞き覚えのある溜息にこわごわと琴子が様子を伺うと、そこには入江家で見た男がいた。
腰に回る男の腕に琴子の頬が赤く染まる。
痛ぇ…と眉を潜める男、直樹に琴子は慌てて頭を下げるとすっと離れた。
「すみません!大丈夫ですか?」
手を差し出すと直樹は不機嫌そうにしながらもその手を掴んで立ち上がる。
立ち上がった直樹はやはり琴子よりもかなり背が高く、琴子はどきどきしながら彼を見上げた。
彼の方は琴子を気にすることなく服についた埃を払っている。
改めて明るい日の中で見る彼はこんな不公平があるのかと言うほど整った顔をしていた。
ずっと見ていたい気がするが、琴子が出てきた窓からは姉妹の騒ぐ声が聞こえる。
名残惜しさを振りきり、「本当にすみませんでした!」と琴子は頭を下げた。
もしかしたらと希望も持っていたが、泣く泣く背を向けたにも関らず、背後から声がかかることはない。
追いつかれるかも知れないこともあり、琴子は駆け足でその場を離れた。
**********
「お姉ちゃん、警察!」
「うるさいわね、今からかけるわよ!」
きゃーきゃーと騒ぐ綾子を制しながら、裕子はコードレスの子機を手に取った。
110番にかけるべくダイヤルを押したところでそれを遮るようにチャイムが鳴る。
どうやら相当雑な犯人だったらしく、被害状況を確認しようとしたものの、無くなったものはなく、ただただ散らかされただけだった。
それでも裕子が大切にしていたコレクションがなぎ倒されていたこともあり、苛々していた裕子は乱暴に電話を置いて大股で設置されたインターフォンへと向かう。
小さな画面には男が一人で映っていた。
スーツ姿で、宅配などとは明らかに様相が異なる男に、裕子の秀麗な眉が寄る。
「…どなた?」
苛々を隠そうともしない裕子の声にも男はひるまなかった。
上方に設置されたカメラに顔を晒すように男は頭上を見る。
その顔はとても美しかった。
優雅な所作で羽織った背広の内ポケットに男が手を入れる。
目を奪われるようにただその光景を見つめていると、その手が黒い手帳のような物を握って再び裕子の視界に入った。
縦長のそれを男は開いて画面に掲げてみせる。
「警察です。少しお話を伺いたいのですが、お時間はよろしいでしょうか。」
黄金に輝く紋章には確かにpoliceの文字が輝いている。
偶然とは言えタイミングのいい訪問に、裕子は妹と目配せして玄関のロックを解除した。
「どうぞ、今お迎えに向かいますので。」
「警視庁の入江直樹と言います。」
手渡された名刺に、裕子は素早く視線を走らせる。
警部と書かれた肩書きの下にはゴシック体で確かに入江直樹と印字されていた。
警察の体系には詳しくないが、この若さで警部とは中々のものだろうと裕子は思う。
互いに軽く頭を下げて向き合うと、直樹が裕子の肩越しに室内を見て眉をひそめた。
「…空き巣ですか?」
「ええ。今警察に通報しようとしたところです。」
「被害状況はなにか?」
淡々と聞く直樹に、裕子も冷静に状況を振り返った。
「予定より帰宅が早かったので失敗したようでしたよ。」
「中を拝見しても?」
裕子は頷くと扉に身を寄せるように道をあけると、直樹が玄関内へと入っていく。
やがてパタンと扉が閉まると、植え込みががさがさと音を立てた。
すごいノリノリで書いております。
完全なる自己満足です。
今更ながら一話に前書きが必要ではなかったかと思うのですが…。
…ついて来て頂ける方だけついてきて頂ければ嬉しいです。
警察云々のことに関しては、推理小説好きなだけなので、雰囲気で誤魔化している部分がほとんどですので、どうぞ目をつぶって下さい。
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