「長編」
stay with me 【完】
stay with me 3
「「パーティー!?」」
直樹が琴子の作った卵焼きをじゃりじゃりと言わせながら噛み砕き飲み込むと、それに合わせたように琴子と裕樹が同時に声を上げた。
琴子は期待に目を輝かせ、裕樹は面倒くさそうに眉をひそめている。
「パパの取引先の社長のお誘いって言うのは分かったけどさ、何で琴子まで?」
じろっと牽制するかのような裕樹の視線にむっと口をへの字にしている琴子に視線をやると、頬をピンクに染めて直樹を見てきた。
きっと直樹が甘い言葉で誘ってくれるのを期待しているのだろう。
いつも冷たくあしらわれているのによくも懲りないものだが、それが琴子だ。
呆れたような視線をものともせず、きらきらと目を輝かせている琴子を見てふっと直樹はその形のいい唇を歪めた。
「内輪だけの集まりで格式ばったものじゃないらしいけどな。パーティーと言ったらパートナーが必要だろ。」
「入江くん!」「お兄ちゃん!」
仲がいいのか悪いのか。
琴子と裕樹はまた声をはもらせて直樹に詰め寄った。
「前のクリスマスパーティーでは踊れなかったしな。今回は期待してもいいんだろ?」
「やだ、入江くんたらっ。」
やだと言いながらもすっかり夢を見ているのか、頬を両手で抑えながら体をくねらせる琴子の視線は遠い。
「お前、踊れるのかよ?」
うへへと気味悪く笑う琴子を見ながら、よほど納得出来ないらしく、裕樹は短い腕を組んで唇を尖らせている。
「俺とのダンスをそれだけ妄想してるんだもんな。当然踊れるんだろ?」
「当然!…当、然。……入江くぅん!」
直樹と裕樹、二人から視線を向けられてようやく夢から覚めたのか、琴子は胸を張って答えた後、尻すぼみ的に声の調子を弱めた。
涙目で直樹を見上げる頬は、先ほどまでのピンクからいまや真っ青だ。
「…ばーか。そんなことしたことないだろ。…今回は本当に内輪だけの集まりみたいだからダンスなんてねぇよ。…お袋がドレスを用意するって聞かないからな。馬鹿みたいに食べたり飲みつぶれたりしないようにしろよ。」
目尻を赤く染めて見上げてくる琴子の頭に直樹の手が伸びてぽんぽんと2回はねた。
それだけでまた琴子の顔に笑みが広がる。
「裕樹も。心配ないと思うけど親父の取引先だからな。」
「うん、挨拶だけしたら端で大人しくしてるよ。」
ご機嫌な琴子と裕樹、直樹で囲む食卓。
重樹が入院してからというもの、紀子が看病で病院にいることが増えたため、三人での時間が増えた。
直樹だけは重樹の変わりに社長代理として会社に泊まりこむこともあっていないこともあったが、それはここしばらく見られた光景だった。
過度に黒い肉も、殻の入った卵焼きも、芯の残ったような里芋も、慣れない琴子が自分なりに努力していると思えばこそ。
裕樹も顔をひそめながらぼりぼりと音を立てて食事を口に運んだ。
直樹が琴子の作った卵焼きをじゃりじゃりと言わせながら噛み砕き飲み込むと、それに合わせたように琴子と裕樹が同時に声を上げた。
琴子は期待に目を輝かせ、裕樹は面倒くさそうに眉をひそめている。
「パパの取引先の社長のお誘いって言うのは分かったけどさ、何で琴子まで?」
じろっと牽制するかのような裕樹の視線にむっと口をへの字にしている琴子に視線をやると、頬をピンクに染めて直樹を見てきた。
きっと直樹が甘い言葉で誘ってくれるのを期待しているのだろう。
いつも冷たくあしらわれているのによくも懲りないものだが、それが琴子だ。
呆れたような視線をものともせず、きらきらと目を輝かせている琴子を見てふっと直樹はその形のいい唇を歪めた。
「内輪だけの集まりで格式ばったものじゃないらしいけどな。パーティーと言ったらパートナーが必要だろ。」
「入江くん!」「お兄ちゃん!」
仲がいいのか悪いのか。
琴子と裕樹はまた声をはもらせて直樹に詰め寄った。
「前のクリスマスパーティーでは踊れなかったしな。今回は期待してもいいんだろ?」
「やだ、入江くんたらっ。」
やだと言いながらもすっかり夢を見ているのか、頬を両手で抑えながら体をくねらせる琴子の視線は遠い。
「お前、踊れるのかよ?」
うへへと気味悪く笑う琴子を見ながら、よほど納得出来ないらしく、裕樹は短い腕を組んで唇を尖らせている。
「俺とのダンスをそれだけ妄想してるんだもんな。当然踊れるんだろ?」
「当然!…当、然。……入江くぅん!」
直樹と裕樹、二人から視線を向けられてようやく夢から覚めたのか、琴子は胸を張って答えた後、尻すぼみ的に声の調子を弱めた。
涙目で直樹を見上げる頬は、先ほどまでのピンクからいまや真っ青だ。
「…ばーか。そんなことしたことないだろ。…今回は本当に内輪だけの集まりみたいだからダンスなんてねぇよ。…お袋がドレスを用意するって聞かないからな。馬鹿みたいに食べたり飲みつぶれたりしないようにしろよ。」
目尻を赤く染めて見上げてくる琴子の頭に直樹の手が伸びてぽんぽんと2回はねた。
それだけでまた琴子の顔に笑みが広がる。
「裕樹も。心配ないと思うけど親父の取引先だからな。」
「うん、挨拶だけしたら端で大人しくしてるよ。」
ご機嫌な琴子と裕樹、直樹で囲む食卓。
重樹が入院してからというもの、紀子が看病で病院にいることが増えたため、三人での時間が増えた。
直樹だけは重樹の変わりに社長代理として会社に泊まりこむこともあっていないこともあったが、それはここしばらく見られた光景だった。
過度に黒い肉も、殻の入った卵焼きも、芯の残ったような里芋も、慣れない琴子が自分なりに努力していると思えばこそ。
裕樹も顔をひそめながらぼりぼりと音を立てて食事を口に運んだ。
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