「長編」
stay with me 【完】
stay with me 2
「パーティー?」
長い足を組んで投げ出しながら直樹は書類をディスクに戻し、重樹の時から変わらずパンダイを支えてくれている秘書を見た。
秘書は重樹より少し上なのか顔中に皺が刻まれているがその表情は読めない。
「はい、大泉会長から直々に。社長の病状も安定しているようですし、病室とオフィスや家の往復では参ってしまうだろう、ご家族でご都合の付く方がいらっしゃったら同伴してくるようにと仰せです。」
「参ってしまう…ね。」
「はい。社長代理…どうされますか?」
電話で伝言を受けたのか、手帳を見ながら話す目に気遣いが見え隠れする気がして、柔和な笑みを浮かべた秘書に鼻で息を吐き頷く。
「直々にご招待頂いたなら断れません。…喜んでお伺いしますと伝えてください。」
**********
「まぁ、大泉会長から?」
療養中の父に仕事の話をするのはどうかと直樹は思ったが、相手はパンダイの創設者であり休業中とはいえ会社の長だ。
社長本人からの御礼も必要となるだろう申し出に、直樹は病院に重樹を訪ねた。
「ああ、この前会社にまで親父の留守を見舞いに来てくれてね。」
「そう、お見舞いのお花も頂いたわ。退院したらお礼しないと。」
昔から小額の取引があったとはいえ、今のパンダイは内外的にけしていい経済状況とはいえない。
大泉グループと業務提携でも出来れば商品開発への援助も受けられるだろうが、それはこれからの働きかけ次第、という状況である。
「俺は社長代理として出席するつもりだ。」
「それがいいだろうな。直樹に直接ではないということはそう格式ばったものでもないだろう。」
「そうね。せっかくのお誘いなんですから顔をお見せしてご挨拶してくればいいわ。…それよりお兄ちゃん。」
それまで社長婦人として楚々とした振る舞いをしていた紀子がにんまりと口角を上げて笑うのを見て、直樹はたまらず紀子譲りの切れ長の目で、狐のように細められた目を睨み付けた。
こういう時は大概直樹にとって碌なことにはならない。
「せっかくご家族で、と仰って頂いているんですから、琴子ちゃんとついでに裕樹も一緒に連れて行ってあげたら?」
「裕樹はいいけどなんで琴子まで。琴子は家族じゃないだろ?」
やっぱりとあんまりに想像通りの紀子の提案に、直樹は思わず深い溜息をついて反論する。
「まぁ。琴子ちゃんは可愛い私の娘同然なのよ!最近慣れないアルバイトに私の変わりに家の家事まで頑張ってくれて…労ってあげるべきだわ。」
ふんっと鼻息も荒く力説されて反論する気も失せる。
「裕樹のスーツ、ちゃんと出しておいてくれよ。」
こういう時はさっさと退散するに限ると直樹が病院の見舞い客用のパイプ椅子から腰を上げると、すかさず紀子が直樹の広い背中に声をかけた。
「琴子ちゃんのドレスも私が用意するから、お兄ちゃんはちゃんと琴子ちゃんを誘うのよ!」
キーキーと高い母親の言葉に直樹は病室の扉を開けると右手を軽く頭の横で振って見せた。
いつものように無視をしてもよかったけれど、そうすると紀子が毎日うるさく言ってくるに決まっている。
病院の廊下を歩く直樹の頭には大泉会長との業務提携の可能性と数年前のクリスマスに見た琴子のドレス姿が浮かんでいた。
2話です。
思ったより内容が進んでおりません。
長さ的にはもう少し長くてもいいのかなと思うのですが…。
3話がまだ出来上がってないので、明日も更新できるか。
短編もあげたいと思うので、ばてないようにペースを調節したいと思います。
長い足を組んで投げ出しながら直樹は書類をディスクに戻し、重樹の時から変わらずパンダイを支えてくれている秘書を見た。
秘書は重樹より少し上なのか顔中に皺が刻まれているがその表情は読めない。
「はい、大泉会長から直々に。社長の病状も安定しているようですし、病室とオフィスや家の往復では参ってしまうだろう、ご家族でご都合の付く方がいらっしゃったら同伴してくるようにと仰せです。」
「参ってしまう…ね。」
「はい。社長代理…どうされますか?」
電話で伝言を受けたのか、手帳を見ながら話す目に気遣いが見え隠れする気がして、柔和な笑みを浮かべた秘書に鼻で息を吐き頷く。
「直々にご招待頂いたなら断れません。…喜んでお伺いしますと伝えてください。」
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「まぁ、大泉会長から?」
療養中の父に仕事の話をするのはどうかと直樹は思ったが、相手はパンダイの創設者であり休業中とはいえ会社の長だ。
社長本人からの御礼も必要となるだろう申し出に、直樹は病院に重樹を訪ねた。
「ああ、この前会社にまで親父の留守を見舞いに来てくれてね。」
「そう、お見舞いのお花も頂いたわ。退院したらお礼しないと。」
昔から小額の取引があったとはいえ、今のパンダイは内外的にけしていい経済状況とはいえない。
大泉グループと業務提携でも出来れば商品開発への援助も受けられるだろうが、それはこれからの働きかけ次第、という状況である。
「俺は社長代理として出席するつもりだ。」
「それがいいだろうな。直樹に直接ではないということはそう格式ばったものでもないだろう。」
「そうね。せっかくのお誘いなんですから顔をお見せしてご挨拶してくればいいわ。…それよりお兄ちゃん。」
それまで社長婦人として楚々とした振る舞いをしていた紀子がにんまりと口角を上げて笑うのを見て、直樹はたまらず紀子譲りの切れ長の目で、狐のように細められた目を睨み付けた。
こういう時は大概直樹にとって碌なことにはならない。
「せっかくご家族で、と仰って頂いているんですから、琴子ちゃんとついでに裕樹も一緒に連れて行ってあげたら?」
「裕樹はいいけどなんで琴子まで。琴子は家族じゃないだろ?」
やっぱりとあんまりに想像通りの紀子の提案に、直樹は思わず深い溜息をついて反論する。
「まぁ。琴子ちゃんは可愛い私の娘同然なのよ!最近慣れないアルバイトに私の変わりに家の家事まで頑張ってくれて…労ってあげるべきだわ。」
ふんっと鼻息も荒く力説されて反論する気も失せる。
「裕樹のスーツ、ちゃんと出しておいてくれよ。」
こういう時はさっさと退散するに限ると直樹が病院の見舞い客用のパイプ椅子から腰を上げると、すかさず紀子が直樹の広い背中に声をかけた。
「琴子ちゃんのドレスも私が用意するから、お兄ちゃんはちゃんと琴子ちゃんを誘うのよ!」
キーキーと高い母親の言葉に直樹は病室の扉を開けると右手を軽く頭の横で振って見せた。
いつものように無視をしてもよかったけれど、そうすると紀子が毎日うるさく言ってくるに決まっている。
病院の廊下を歩く直樹の頭には大泉会長との業務提携の可能性と数年前のクリスマスに見た琴子のドレス姿が浮かんでいた。
2話です。
思ったより内容が進んでおりません。
長さ的にはもう少し長くてもいいのかなと思うのですが…。
3話がまだ出来上がってないので、明日も更新できるか。
短編もあげたいと思うので、ばてないようにペースを調節したいと思います。
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