「長編」
stay with me 【完】
stay with me 17
不破に先導されて入った店は人気の店だったのか、おしゃれで料理も絶品だった。
最初は食欲などなかった琴子だが、不破が目に付くまま到底一人では食べ切れない量を注文したせいでしぶしぶ料理を口に運んだ。
最後には美味しくてついつい箸が進んでしまったせいでデザートまで綺麗に完食した琴子だったが、食べ過ぎて苦しいくらいのお腹を抱えながら、行きと同じく不破の助手席に乗りこむと自然と瞼が落ちてくる。
いつの間にかうとうとと船をこぎながら琴子は大泉の屋敷へ帰ってきていた。
「相原さん、袋貸して。」
屋敷内に入ってすぐ、不破は琴子に持たせていた袋を受け取るために手を伸ばした。
ビニール袋に入れられた本を不破に手渡すと不破はそれを抱えて書斎へと入る。
すぐにパソコンを起動させた不破だが、購入した本は袋から出されることなく机に置かれていた。
琴子が遅れて席に着くと、無言のままキーを叩く音が聞こえはじめる。
静かだが確かにする人の気配に琴子はほっと息を吐いた。
午前中はまったく集中できなかったが、それからは少し書類を進めることが出来た。
琴子にとって直樹にはっきりと気持ちに応えることが出来ないと言われたことはもちろんショックだったが、彼が医者になるという夢を諦めてしまうのもショックだった。
直樹ならば出来ないことはないと今でも思っているが、やはり今の状況は彼にとっても厳しいのだろう。
だんだん帰宅する日も時間も減ってきていたし、時に難しそうに眉を寄せていた。
それでも琴子は直樹がそんなに大変な状況に置かれているとは思っていなかった。
悲しそうな彼の顔が琴子の脳裏から離れてくれない。
少しでも元気付けられたらと思っていたが、直樹が許すままに告げていた思いが重くと思われているとは思わなかった。
今まで面倒くさそうにしながらも面倒見のよかった彼に、他の男を見つけろとまで突き放されてしまっては、本当に琴子に可能性など残されていないのだろう。
好きでいることも彼のためになにかすることも拒否されてしまったが、直樹は大泉会長との仕事はありがたいと言ってくれた。
それだけは琴子を信用して任せてくれた。
気づいてあげられず、直樹にあんな酷い事を言わせてしまったのは悔しく悲しかったが、今はそれだけで十分だった。
出来ることはそう多くないだろうが、大泉会長は直樹の才能は買っているし、出来る限り支援すると言ってくれている。
直樹の力になりたい。
二人で繰り返しゴッドレンジャーを見たことを思い出して、琴子は強くそう思った。
**********
いつの間にか集中していたらしく突如鳴り響いた内線の音に琴子は肩をはねさせた。
琴子が立てる音と不破のパソコンの音以外、滅多に音のしない書斎に響く音に琴子が電話を見つめていると不破が応対するために受話器を取った。
「はい。」内線のため相手は限られているのだろう、不破は短く電話の相手に応えた。
数回頷くと受話器を置き、琴子に向き直る。
「会長からだ。今日の夕食は一緒に、と仰ってるんだが…都合は大丈夫か?」
急な申し出ではあるが、最近大泉会長と会っていなかった琴子は頷くことで応える。
食後に手洗いに立ったが、もう目の腫れも目立たなくなってきていたし、問題はない。
気になるのは裕樹のことだが、彼は琴子がいなくても大丈夫だろう。
入江家と重雄にだけ連絡することを告げると、不破は頷いて会長に了承の返事をした。
琴子も不破に背を向けて裕樹とふぐ吉にいる重雄に遅くなることを告げる。
重雄は二つ返事で了承してくれたが、裕樹には少しばかり憎まれ口を叩かれた。
いつもならば言い合いになるところだが適当なところで切り上げて通話を切る。
少し訝しげな裕樹の声が耳に残ったが、彼の声は少し高いが直樹に似ている。それだけで今の琴子には少しつらかった。
大泉会長との会食までに少しでも進めておこうと琴子はまた書類に没頭した。
不破もそのつもりなのだろう、通話を終えてすぐパソコンに向き直っていた。
かたかたと規則正しいキーの音が響く。
琴子はあまり機械が得意ではないため、パソコンを使っても指一本ずつ、ゆっくりとしか打てない。
そのために気がつかなかった。
不破が文字を打ちながらも時折気遣わしげに琴子を見ていることに。
昨夜は更新できませんでした。
ある程度の展開は決めていたはずなのですが、急にどう書けばいいのか分からなくなってしまいまして…。
あまり自分の文章は読み返さないタイプなのですが、続きを書くために読み返して撃沈。
もしかしたら後日多少手を入れるかもしれません。
今から手直ししたらより変になってしまうかも知れませんが、無事に書き終えるように頑張ります。
最初は食欲などなかった琴子だが、不破が目に付くまま到底一人では食べ切れない量を注文したせいでしぶしぶ料理を口に運んだ。
最後には美味しくてついつい箸が進んでしまったせいでデザートまで綺麗に完食した琴子だったが、食べ過ぎて苦しいくらいのお腹を抱えながら、行きと同じく不破の助手席に乗りこむと自然と瞼が落ちてくる。
いつの間にかうとうとと船をこぎながら琴子は大泉の屋敷へ帰ってきていた。
「相原さん、袋貸して。」
屋敷内に入ってすぐ、不破は琴子に持たせていた袋を受け取るために手を伸ばした。
ビニール袋に入れられた本を不破に手渡すと不破はそれを抱えて書斎へと入る。
すぐにパソコンを起動させた不破だが、購入した本は袋から出されることなく机に置かれていた。
琴子が遅れて席に着くと、無言のままキーを叩く音が聞こえはじめる。
静かだが確かにする人の気配に琴子はほっと息を吐いた。
午前中はまったく集中できなかったが、それからは少し書類を進めることが出来た。
琴子にとって直樹にはっきりと気持ちに応えることが出来ないと言われたことはもちろんショックだったが、彼が医者になるという夢を諦めてしまうのもショックだった。
直樹ならば出来ないことはないと今でも思っているが、やはり今の状況は彼にとっても厳しいのだろう。
だんだん帰宅する日も時間も減ってきていたし、時に難しそうに眉を寄せていた。
それでも琴子は直樹がそんなに大変な状況に置かれているとは思っていなかった。
悲しそうな彼の顔が琴子の脳裏から離れてくれない。
少しでも元気付けられたらと思っていたが、直樹が許すままに告げていた思いが重くと思われているとは思わなかった。
今まで面倒くさそうにしながらも面倒見のよかった彼に、他の男を見つけろとまで突き放されてしまっては、本当に琴子に可能性など残されていないのだろう。
好きでいることも彼のためになにかすることも拒否されてしまったが、直樹は大泉会長との仕事はありがたいと言ってくれた。
それだけは琴子を信用して任せてくれた。
気づいてあげられず、直樹にあんな酷い事を言わせてしまったのは悔しく悲しかったが、今はそれだけで十分だった。
出来ることはそう多くないだろうが、大泉会長は直樹の才能は買っているし、出来る限り支援すると言ってくれている。
直樹の力になりたい。
二人で繰り返しゴッドレンジャーを見たことを思い出して、琴子は強くそう思った。
**********
いつの間にか集中していたらしく突如鳴り響いた内線の音に琴子は肩をはねさせた。
琴子が立てる音と不破のパソコンの音以外、滅多に音のしない書斎に響く音に琴子が電話を見つめていると不破が応対するために受話器を取った。
「はい。」内線のため相手は限られているのだろう、不破は短く電話の相手に応えた。
数回頷くと受話器を置き、琴子に向き直る。
「会長からだ。今日の夕食は一緒に、と仰ってるんだが…都合は大丈夫か?」
急な申し出ではあるが、最近大泉会長と会っていなかった琴子は頷くことで応える。
食後に手洗いに立ったが、もう目の腫れも目立たなくなってきていたし、問題はない。
気になるのは裕樹のことだが、彼は琴子がいなくても大丈夫だろう。
入江家と重雄にだけ連絡することを告げると、不破は頷いて会長に了承の返事をした。
琴子も不破に背を向けて裕樹とふぐ吉にいる重雄に遅くなることを告げる。
重雄は二つ返事で了承してくれたが、裕樹には少しばかり憎まれ口を叩かれた。
いつもならば言い合いになるところだが適当なところで切り上げて通話を切る。
少し訝しげな裕樹の声が耳に残ったが、彼の声は少し高いが直樹に似ている。それだけで今の琴子には少しつらかった。
大泉会長との会食までに少しでも進めておこうと琴子はまた書類に没頭した。
不破もそのつもりなのだろう、通話を終えてすぐパソコンに向き直っていた。
かたかたと規則正しいキーの音が響く。
琴子はあまり機械が得意ではないため、パソコンを使っても指一本ずつ、ゆっくりとしか打てない。
そのために気がつかなかった。
不破が文字を打ちながらも時折気遣わしげに琴子を見ていることに。
昨夜は更新できませんでした。
ある程度の展開は決めていたはずなのですが、急にどう書けばいいのか分からなくなってしまいまして…。
あまり自分の文章は読み返さないタイプなのですが、続きを書くために読み返して撃沈。
もしかしたら後日多少手を入れるかもしれません。
今から手直ししたらより変になってしまうかも知れませんが、無事に書き終えるように頑張ります。
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