「長編」
stay with me 【完】
stay with me 16
琴子は不破とデパートに来ていた。
大泉家の周りは閑静な住宅街で日常品以外の買い物は少し出なければいけないらしい。不破の車に乗せられた間終始無言で、琴子は赤い目の理由を聞かれなかったことに少しほっとした。
大型書店で本を買い込むと不破はその場で本を発送して、すぐに使うという本が一冊入った袋を琴子に押し付ける。
それだけを片手にぶら下げて歩くと不破は駐車場とは違う方へと歩き出した。
「不破さん?」
「…コーヒーが飲みたい。」
無愛想に言うとエレベーター脇に設置された地図の前に立つ。
会長の頼みは急ぎではあるものの、期限が設定されているわけではない。
どうせ集中力は途切れているのだから、琴子としては反論する必要もなかった。
本屋のあるフロアにはちょうどいい店がなかったのか、不破はエスカレーターへと向かう。
うつむいて歩く琴子からは高級そうな靴のかかとだけが見えていた。
「相原さん。」
書店より二つ下のフロアに降りて少し歩いたところで不破は琴子を振り返った。
本の入った袋を抱きしめて不破を見上げると軽く溜息をつかれる。
「時間もちょうどいいし、昼も済ませておこう。」
「お昼…。」
「ああ。」
「私は…」いい、そう言おうとした瞬間、琴子のお腹が返事をする。
「…漫画みたいだな。」
琴子が恥ずかしさのあまり顔を赤らめてお腹をおさえると、不破の笑う声が聞こえた。
これ以上言うことも見つからず、無言で不破が最初に向かっていたカフェへと足を向けると、今度は不破が琴子の後ろを歩く。
店までの最後の直線を歩いていると、右手におもちゃ売り場があった。
ゲーム売り場を通り過ぎると子供向けのコーナーが続く。
女の子向けの明るい色合いに続く、青を基調としたいかにも男の子向けのコーナー。
以前であればもっとも縁遠かった場所だが、今の琴子には違った。
プラレールの線路やミニカーは入江家を思い出すし、展示されるように居並ぶ戦隊ヒーローはパンダイで目にするものだ。
小さい子供たちが楽しそうに見本のおもちゃで遊んでいるのを琴子は思わず立ち止まって見入ってしまった。
どの子も目を輝かせて甲高い声を上げている。
おもちゃの中には琴子が直樹と考えたゴッドペガサスもあって、琴子は少し泣きそうになった。
吸い寄せられるように子供たちに近づくと、置かれていたゴッドペガサスを手にとって見つめる。
あまりに悲しそうな琴子が気になったのか、小さな手が琴子の服の裾を掴んだ。
「お姉ちゃん、ペガサスが好きなの?」
大きな目が琴子を見上げるように見ているのに気づき、にっこりと微笑む。
「…うん、大好きだよ!かっこいいでしょ!」
「かっこいい!」
「かっこいいだけじゃなくてペガサスは強いんだから!」
「知ってるよ!」
興奮しながら必殺技を披露してくれる男の子に自然に笑みがこぼれる。
しばらく男の子と話していたが、男の子のお母さんが迎えに来たことでお開きになってしまった。
「じゃあね!お姉ちゃん!」
「うん、じゃあね!」
大きく手を振って離れていく男の子を見て、少し清々しい気分になる。
男の子が見えなくなるまで見送った琴子の隣に影がさした。
「不破さん。」
見ると誰もいなくなったキッズコーナーで不破がゴッドペガサスを手にしている。
「これはパンダイの商品だったか。最近のヒット作だったな。」
「はい、入江くんが考えたんです。」
「ふぅん。子供向けは毎年のように新しいのが出るからな。似たようなものにならないようにするのは大変だろ。」
「そう、かもしれません。でも入江くんなら大丈夫です。」
そっと置かれたゴッドペガサスは他のおもちゃたちの中で輝いているように琴子には見えた。
立ち上がった不破と並んでカフェへと足を進める。
「…相原さんってさ、マゾなんじゃない?」
「マゾ?」
「ドM。」
「はぁ?」
最初は本当に意味が分からなかった琴子も、わざわざ言いなおされた言葉を聞いて眉をひそめる。
「それしかないだろ。ドM。」
理美たちとそういう話で笑っていたことがないではないが、何度も連呼されて面白いことではない。
琴子は唇を尖らせながら不破と昼時のOLが溢れかえるカフェに入った。
今週は0時の予約投稿にも間に合いませんので、深夜更新です。
書きあがり次第アップしますね。
大体ワードで2頁を目安にしているのですが今回はやたらに長い…ですよね。
自分でもかなり読みづらいように感じるのですが、きりがよくなかったのでそのままあげます。
ご意見聞かせていただけると助かります。
大泉家の周りは閑静な住宅街で日常品以外の買い物は少し出なければいけないらしい。不破の車に乗せられた間終始無言で、琴子は赤い目の理由を聞かれなかったことに少しほっとした。
大型書店で本を買い込むと不破はその場で本を発送して、すぐに使うという本が一冊入った袋を琴子に押し付ける。
それだけを片手にぶら下げて歩くと不破は駐車場とは違う方へと歩き出した。
「不破さん?」
「…コーヒーが飲みたい。」
無愛想に言うとエレベーター脇に設置された地図の前に立つ。
会長の頼みは急ぎではあるものの、期限が設定されているわけではない。
どうせ集中力は途切れているのだから、琴子としては反論する必要もなかった。
本屋のあるフロアにはちょうどいい店がなかったのか、不破はエスカレーターへと向かう。
うつむいて歩く琴子からは高級そうな靴のかかとだけが見えていた。
「相原さん。」
書店より二つ下のフロアに降りて少し歩いたところで不破は琴子を振り返った。
本の入った袋を抱きしめて不破を見上げると軽く溜息をつかれる。
「時間もちょうどいいし、昼も済ませておこう。」
「お昼…。」
「ああ。」
「私は…」いい、そう言おうとした瞬間、琴子のお腹が返事をする。
「…漫画みたいだな。」
琴子が恥ずかしさのあまり顔を赤らめてお腹をおさえると、不破の笑う声が聞こえた。
これ以上言うことも見つからず、無言で不破が最初に向かっていたカフェへと足を向けると、今度は不破が琴子の後ろを歩く。
店までの最後の直線を歩いていると、右手におもちゃ売り場があった。
ゲーム売り場を通り過ぎると子供向けのコーナーが続く。
女の子向けの明るい色合いに続く、青を基調としたいかにも男の子向けのコーナー。
以前であればもっとも縁遠かった場所だが、今の琴子には違った。
プラレールの線路やミニカーは入江家を思い出すし、展示されるように居並ぶ戦隊ヒーローはパンダイで目にするものだ。
小さい子供たちが楽しそうに見本のおもちゃで遊んでいるのを琴子は思わず立ち止まって見入ってしまった。
どの子も目を輝かせて甲高い声を上げている。
おもちゃの中には琴子が直樹と考えたゴッドペガサスもあって、琴子は少し泣きそうになった。
吸い寄せられるように子供たちに近づくと、置かれていたゴッドペガサスを手にとって見つめる。
あまりに悲しそうな琴子が気になったのか、小さな手が琴子の服の裾を掴んだ。
「お姉ちゃん、ペガサスが好きなの?」
大きな目が琴子を見上げるように見ているのに気づき、にっこりと微笑む。
「…うん、大好きだよ!かっこいいでしょ!」
「かっこいい!」
「かっこいいだけじゃなくてペガサスは強いんだから!」
「知ってるよ!」
興奮しながら必殺技を披露してくれる男の子に自然に笑みがこぼれる。
しばらく男の子と話していたが、男の子のお母さんが迎えに来たことでお開きになってしまった。
「じゃあね!お姉ちゃん!」
「うん、じゃあね!」
大きく手を振って離れていく男の子を見て、少し清々しい気分になる。
男の子が見えなくなるまで見送った琴子の隣に影がさした。
「不破さん。」
見ると誰もいなくなったキッズコーナーで不破がゴッドペガサスを手にしている。
「これはパンダイの商品だったか。最近のヒット作だったな。」
「はい、入江くんが考えたんです。」
「ふぅん。子供向けは毎年のように新しいのが出るからな。似たようなものにならないようにするのは大変だろ。」
「そう、かもしれません。でも入江くんなら大丈夫です。」
そっと置かれたゴッドペガサスは他のおもちゃたちの中で輝いているように琴子には見えた。
立ち上がった不破と並んでカフェへと足を進める。
「…相原さんってさ、マゾなんじゃない?」
「マゾ?」
「ドM。」
「はぁ?」
最初は本当に意味が分からなかった琴子も、わざわざ言いなおされた言葉を聞いて眉をひそめる。
「それしかないだろ。ドM。」
理美たちとそういう話で笑っていたことがないではないが、何度も連呼されて面白いことではない。
琴子は唇を尖らせながら不破と昼時のOLが溢れかえるカフェに入った。
今週は0時の予約投稿にも間に合いませんので、深夜更新です。
書きあがり次第アップしますね。
大体ワードで2頁を目安にしているのですが今回はやたらに長い…ですよね。
自分でもかなり読みづらいように感じるのですが、きりがよくなかったのでそのままあげます。
ご意見聞かせていただけると助かります。
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~ Comment ~
初めまして。
「stay with me」の小説を楽しみに読んでいる莉久と申します
入江くんの言葉に傷ついて泣いてるところに不破さんと買い物することになったんですね
少しでも琴子ちゃんの気分転換になると良いなと思いますね
その2人の姿を入江くんが見て無自覚嫉妬してくれるなら嬉しいんですがそこんところどうでしょう?
沙穂子さんや不破さんを含めた4角関係に発展するのかも気になるところなので続き楽しみにしています
でわ、失礼します
入江くんの言葉に傷ついて泣いてるところに不破さんと買い物することになったんですね
少しでも琴子ちゃんの気分転換になると良いなと思いますね
その2人の姿を入江くんが見て無自覚嫉妬してくれるなら嬉しいんですがそこんところどうでしょう?
沙穂子さんや不破さんを含めた4角関係に発展するのかも気になるところなので続き楽しみにしています
でわ、失礼します
おばちゃん様
そう言って頂けると安心します。
せっかく書いているんですから、一人でも多くの方に読んで頂いて、少しでも楽しんで頂けると嬉しいですもん。
今日もこれから続きが書けるように頑張りますね!
いつもありがとうございます!
せっかく書いているんですから、一人でも多くの方に読んで頂いて、少しでも楽しんで頂けると嬉しいですもん。
今日もこれから続きが書けるように頑張りますね!
いつもありがとうございます!
- #7 pukka
- URL
- 2012.04/18 23:02
- ▲EntryTop
莉久様
はじめまして。
コメントありがとうございます!
不破さんがこれからどう絡んでいくのか。
オリキャラなので受け入れてもらえるかと心配していたのですが、お楽しみ頂けると嬉しいです。
琴子ちゃんを泣かせっぱなしにはしない…はずです。
コメントありがとうございます!
不破さんがこれからどう絡んでいくのか。
オリキャラなので受け入れてもらえるかと心配していたのですが、お楽しみ頂けると嬉しいです。
琴子ちゃんを泣かせっぱなしにはしない…はずです。
- #8 pukka
- URL
- 2012.04/18 23:30
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