「長編」
stay with me 【完】
stay with me 1
お目汚しですが、とりあえず一話完成しましたので、サイトを始動する決意を致しました。
遅筆な性分ですので時間がかかるかと思いますが、時間を見つけて続けようと思います。
少しでも気に入って頂けましたら感想を頂けると嬉しいです。
※ご注意
今回の話は原作10巻の重樹が倒れた所から始まりますが、そこから原作を大きく逸脱します。
入江くんが少し情けないかもしれませんが、原作と違う展開、オリキャラを嫌われる方はご遠慮下さい。
「最初はぐーだからねっ!」
「後だしは禁止よっ!」
ドアを閉めていても聞こえてくる女子社員の騒がしい声に直樹は眉間に皺を寄せながら、ため息を飲み込んだ。
彼にしてみればたかがお茶だが、そう言っては支離滅裂な反論が返ってくるのは分かっている。
普段は見逃してやっているが、時と場合によりだ。
―来客中だと分かっているだろうに。
筆頭になって騒いでいるだろう彼女には後で一言物申すことにして、直樹は正面の客に向き直った。
「活気のある職場だね。」
「…恐れ入ります。」
とりあえず背後から聞こえる雄たけびは気のせいだ。
「入江社長の容態はどうなのかな?」
「おかげ様で。…しばらくは絶対安静ですが、容態は安定しています。」
日本の中でも有数の大企業である大泉グループを束ねる翁。
好々爺のように目を細めていはいるが、なんとも言えない威圧感を直樹は感じた。
これが日本経済を長期に渡って牽引してきた男だと言われるとなんとも薄ら寒いものを感じる。
流石の直樹も大泉の放つ雰囲気に唾を飲もうとした時、不意にいつの間にか静けさを取り戻した部屋にノックの音が響いた。
―お茶だ。
即座にそう判断し、「どうぞ」と声をかけると、「失礼します」と殊勝な態度を取り繕った琴子がお茶のお盆を手にドアを開けた。
琴子にしてはそつなく、音も立てずに大泉会長の前に置かれたお茶に直樹はそっと胸を撫で下ろす。
こそっと直樹に視線を向けて得意げに微笑む琴子に、呆れつつも肩の力が抜けた。
「ありがとう。」
声をかけられて琴子の小さな頭がぺこりと下がる。
自分の前に置かれたお茶に手を伸ばしながら、大泉会長は琴子を見ていたずらに微笑むと気さくに声をかけた。
相当インパクトがあったのだろう。
先ほどの騒がしさが気になっていたらしい。
指摘されては流石に照れくさかったのか、はにかみながら琴子は自分がここに来る権利を勝ち取ったことを得意げ話した。
直樹からすればバーカとなじって早く済ましてしまいたかったところだがそうも出来ない。
琴子の話を聞いた大泉会長は朗らかに笑って、話は普段の直樹へと移る。
途端に琴子の目が輝いて、ささやかな胸を張った。
「相原」
静かに発される直樹の声は琴子には届かない。
「そりゃもう!もてるもんなんてものじゃないです!入江くんはIQ200もある上にテニスでも一番なんですよ!料理も上手で!」
「ほう、そりゃ凄い」
「相原!」
「凄いでしょ!」
大泉会長が面白がっているからまだいいものの、こんなところで自分のよさを力説されても場違いもいいところだ。
「琴子っ!!」
まだまだいい足りない様子の琴子を強い口調で嗜めると、彼女はびくりと口をつぐみ、伺うように直樹を見た。
怒りに震えそうな手を押さえて直樹は出口を示した。
「もういいから。」
「元気な娘さんじゃな。」
「うるさいだけです。」
失礼しましたと逃げるように琴子が社長室を出ると、扉が閉まったことを確認して大泉が笑い出した。
機嫌を損ねなかったことに胸を撫で下ろしつつ、大泉会長のものよりも幾分色の濃い茶に手を伸ばす。
「…いや、ああいう娘がそばにいると言うのはいいことだよ。」
少し濃いものの程よい熱さの茶に喉を潤しながら、やけに低められた声に直樹はひそかに秀麗な眉をひそめた。
遅筆な性分ですので時間がかかるかと思いますが、時間を見つけて続けようと思います。
少しでも気に入って頂けましたら感想を頂けると嬉しいです。
※ご注意
今回の話は原作10巻の重樹が倒れた所から始まりますが、そこから原作を大きく逸脱します。
入江くんが少し情けないかもしれませんが、原作と違う展開、オリキャラを嫌われる方はご遠慮下さい。
「最初はぐーだからねっ!」
「後だしは禁止よっ!」
ドアを閉めていても聞こえてくる女子社員の騒がしい声に直樹は眉間に皺を寄せながら、ため息を飲み込んだ。
彼にしてみればたかがお茶だが、そう言っては支離滅裂な反論が返ってくるのは分かっている。
普段は見逃してやっているが、時と場合によりだ。
―来客中だと分かっているだろうに。
筆頭になって騒いでいるだろう彼女には後で一言物申すことにして、直樹は正面の客に向き直った。
「活気のある職場だね。」
「…恐れ入ります。」
とりあえず背後から聞こえる雄たけびは気のせいだ。
「入江社長の容態はどうなのかな?」
「おかげ様で。…しばらくは絶対安静ですが、容態は安定しています。」
日本の中でも有数の大企業である大泉グループを束ねる翁。
好々爺のように目を細めていはいるが、なんとも言えない威圧感を直樹は感じた。
これが日本経済を長期に渡って牽引してきた男だと言われるとなんとも薄ら寒いものを感じる。
流石の直樹も大泉の放つ雰囲気に唾を飲もうとした時、不意にいつの間にか静けさを取り戻した部屋にノックの音が響いた。
―お茶だ。
即座にそう判断し、「どうぞ」と声をかけると、「失礼します」と殊勝な態度を取り繕った琴子がお茶のお盆を手にドアを開けた。
琴子にしてはそつなく、音も立てずに大泉会長の前に置かれたお茶に直樹はそっと胸を撫で下ろす。
こそっと直樹に視線を向けて得意げに微笑む琴子に、呆れつつも肩の力が抜けた。
「ありがとう。」
声をかけられて琴子の小さな頭がぺこりと下がる。
自分の前に置かれたお茶に手を伸ばしながら、大泉会長は琴子を見ていたずらに微笑むと気さくに声をかけた。
相当インパクトがあったのだろう。
先ほどの騒がしさが気になっていたらしい。
指摘されては流石に照れくさかったのか、はにかみながら琴子は自分がここに来る権利を勝ち取ったことを得意げ話した。
直樹からすればバーカとなじって早く済ましてしまいたかったところだがそうも出来ない。
琴子の話を聞いた大泉会長は朗らかに笑って、話は普段の直樹へと移る。
途端に琴子の目が輝いて、ささやかな胸を張った。
「相原」
静かに発される直樹の声は琴子には届かない。
「そりゃもう!もてるもんなんてものじゃないです!入江くんはIQ200もある上にテニスでも一番なんですよ!料理も上手で!」
「ほう、そりゃ凄い」
「相原!」
「凄いでしょ!」
大泉会長が面白がっているからまだいいものの、こんなところで自分のよさを力説されても場違いもいいところだ。
「琴子っ!!」
まだまだいい足りない様子の琴子を強い口調で嗜めると、彼女はびくりと口をつぐみ、伺うように直樹を見た。
怒りに震えそうな手を押さえて直樹は出口を示した。
「もういいから。」
「元気な娘さんじゃな。」
「うるさいだけです。」
失礼しましたと逃げるように琴子が社長室を出ると、扉が閉まったことを確認して大泉が笑い出した。
機嫌を損ねなかったことに胸を撫で下ろしつつ、大泉会長のものよりも幾分色の濃い茶に手を伸ばす。
「…いや、ああいう娘がそばにいると言うのはいいことだよ。」
少し濃いものの程よい熱さの茶に喉を潤しながら、やけに低められた声に直樹はひそかに秀麗な眉をひそめた。
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