「短編」
結婚後
感染
「どうして!」
琴子はむっと唇を尖らせながら枕を叩いた。
頭の中には昼間聞いた新人看護婦の台詞がぐるぐると頭をめぐっている。
―今の琴子の悩みは今更といえば今更の話だった。
直樹と琴子は釣り合っていない。
多少なりとも直樹と琴子の関係を知っている者からしたら勝手に言わせておけばというような上辺だけのものだけれど、毎度言われている張本人からしたら溜まったものではない。
顔や頭の出来はもちろん、手先の器用さや運動神経。
天才で何でもこなす直樹と普通の琴子。
2人が夫婦なことに羨望交じりの不満を口にするものはいまだ少なくない。
「…いつになったら夫婦らしく見てもらえるのかな?」
ぽすぽすと枕を叩きながらの不満はまだ続く。
しかしその表情は怒りというより悲しみに近かった。
そもそも琴子だって、周りの声なんて普段はそう気にしているわけではない。
琴子は直樹が大好きだし、直樹からも思って貰えていると分かっている。
それだけで十分すぎるくらいであるのは琴子としても分かっているのだけれど、冗談だとしても他の女性が直樹に近づいていくのは面白くはない。
あーあっと溜息をつきながら足を投げ出すと、琴子はベッドへとその背を預けた。
視界には広い天井が映るが、いつになく殺風景に見えてごろりと体ごと横を向く。
いつもなら直樹がいる側のベッドは壁際の琴子とは違い、ベッドの向こうに室内が広がっている。
紀子のプロデュースに寄る少し過度に乙女チックな寝室。
その室内には琴子の趣味もあっていくつかのぬいぐるみが飾ってあった。
全世界的に有名なテーマパークのキャラクターもその中には多くある。
それを静かに眺めて琴子は急に体を起こした。
「クマもアヒルもネズミもペアだって分かるのに!」
男の子と女の子の性別があるものは多少の差異だけではっきりその二つが揃いであることが分かる。
どれも同じくらいの体躯に同じような衣装。
女の子であればまつげやリボンをつけて女の子らしさを現している。
もし直樹とこうであれば誰からも疑われず夫婦と見られるのだろうか。
今更身長はどうにもならないものの、やっぱり何かペアの物くらいは身に着けるべきなのかもしれない。それが無理でも色合いを揃えてみるとか。
そこまで考えて琴子は思考を手放すようにまたベッドに背中を預けた。
はぁっとまたらしくもなく溜息が琴子の唇からもれる。
その時、ぎしっと琴子の寝転ぶベッドの半身が沈んだ。
目を閉じていた琴子は急に陰った頭上にそっと目を開く。
案の定目の前には先ほどの天井ではなく、呆れたような直樹の顔。
「俺はペアの服なんて着ないからな。」
「…入江君、いつからいたの?」
どうやら考えに夢中になって気がつかなかったが、琴子が一人もんもんとしているのを見ていたらしい。
湯上りの直樹の髪から雫が頬に落ちて、琴子は冷たさに眉を寄せた。
濡れた頬を直樹が指で拭ってくれる。
「お前がぬいぐるみにまであたりだしたときから。ついでに言えば全部声に出してたぜ?」
「本当?」
本人に聞かせるつもりはなかったため、琴子の頬が恥ずかしさに赤らむ。
本当と琴子の隣に座りなおすと、直樹はくすくすと低く笑いながら髪を乾かした。
時刻はすでに丑三つ時。明日が休みとはいえ、そろそろ寝る時間である。
直樹が戻ってきたことで、琴子は素直に三度ベッドに背中を預けた。
それに直樹も倣う。
伸ばされる琴子の手を引いて抱き寄せる直樹。
風呂上りの暖かい体温に自然にあくびが口をついてくる。
ふわわっと大口を開けてあくびをすると、直樹も珍しくふわっとあくびをした。
「…移っちゃったね。」
「こんな近くで大口開けられたらな。」
「お揃い。」
あくびで目元に涙を溜めながら無防備に直樹を見る琴子の額に落ちる唇。
その直樹の目も心持ち涙が満ちている気がする。
それを見れる人などそうはいないだろうと琴子は満足げに瞳を閉じた。
私はどれだけ寝入り間際の雰囲気が好きなのか…。
似た感じですよね。
書きたかったのはあくびをする入江君とぬいぐるみに妬く琴子ちゃん。
ぬいぐるみたちは全て千葉の夢の国を思い浮かべてください。
あくびをする入江君って可愛いかなっと思っただけなんです。
明日明後日の深夜予約投稿しておきました。
そろそろ東京行く準備してきます!
琴子はむっと唇を尖らせながら枕を叩いた。
頭の中には昼間聞いた新人看護婦の台詞がぐるぐると頭をめぐっている。
―今の琴子の悩みは今更といえば今更の話だった。
直樹と琴子は釣り合っていない。
多少なりとも直樹と琴子の関係を知っている者からしたら勝手に言わせておけばというような上辺だけのものだけれど、毎度言われている張本人からしたら溜まったものではない。
顔や頭の出来はもちろん、手先の器用さや運動神経。
天才で何でもこなす直樹と普通の琴子。
2人が夫婦なことに羨望交じりの不満を口にするものはいまだ少なくない。
「…いつになったら夫婦らしく見てもらえるのかな?」
ぽすぽすと枕を叩きながらの不満はまだ続く。
しかしその表情は怒りというより悲しみに近かった。
そもそも琴子だって、周りの声なんて普段はそう気にしているわけではない。
琴子は直樹が大好きだし、直樹からも思って貰えていると分かっている。
それだけで十分すぎるくらいであるのは琴子としても分かっているのだけれど、冗談だとしても他の女性が直樹に近づいていくのは面白くはない。
あーあっと溜息をつきながら足を投げ出すと、琴子はベッドへとその背を預けた。
視界には広い天井が映るが、いつになく殺風景に見えてごろりと体ごと横を向く。
いつもなら直樹がいる側のベッドは壁際の琴子とは違い、ベッドの向こうに室内が広がっている。
紀子のプロデュースに寄る少し過度に乙女チックな寝室。
その室内には琴子の趣味もあっていくつかのぬいぐるみが飾ってあった。
全世界的に有名なテーマパークのキャラクターもその中には多くある。
それを静かに眺めて琴子は急に体を起こした。
「クマもアヒルもネズミもペアだって分かるのに!」
男の子と女の子の性別があるものは多少の差異だけではっきりその二つが揃いであることが分かる。
どれも同じくらいの体躯に同じような衣装。
女の子であればまつげやリボンをつけて女の子らしさを現している。
もし直樹とこうであれば誰からも疑われず夫婦と見られるのだろうか。
今更身長はどうにもならないものの、やっぱり何かペアの物くらいは身に着けるべきなのかもしれない。それが無理でも色合いを揃えてみるとか。
そこまで考えて琴子は思考を手放すようにまたベッドに背中を預けた。
はぁっとまたらしくもなく溜息が琴子の唇からもれる。
その時、ぎしっと琴子の寝転ぶベッドの半身が沈んだ。
目を閉じていた琴子は急に陰った頭上にそっと目を開く。
案の定目の前には先ほどの天井ではなく、呆れたような直樹の顔。
「俺はペアの服なんて着ないからな。」
「…入江君、いつからいたの?」
どうやら考えに夢中になって気がつかなかったが、琴子が一人もんもんとしているのを見ていたらしい。
湯上りの直樹の髪から雫が頬に落ちて、琴子は冷たさに眉を寄せた。
濡れた頬を直樹が指で拭ってくれる。
「お前がぬいぐるみにまであたりだしたときから。ついでに言えば全部声に出してたぜ?」
「本当?」
本人に聞かせるつもりはなかったため、琴子の頬が恥ずかしさに赤らむ。
本当と琴子の隣に座りなおすと、直樹はくすくすと低く笑いながら髪を乾かした。
時刻はすでに丑三つ時。明日が休みとはいえ、そろそろ寝る時間である。
直樹が戻ってきたことで、琴子は素直に三度ベッドに背中を預けた。
それに直樹も倣う。
伸ばされる琴子の手を引いて抱き寄せる直樹。
風呂上りの暖かい体温に自然にあくびが口をついてくる。
ふわわっと大口を開けてあくびをすると、直樹も珍しくふわっとあくびをした。
「…移っちゃったね。」
「こんな近くで大口開けられたらな。」
「お揃い。」
あくびで目元に涙を溜めながら無防備に直樹を見る琴子の額に落ちる唇。
その直樹の目も心持ち涙が満ちている気がする。
それを見れる人などそうはいないだろうと琴子は満足げに瞳を閉じた。
私はどれだけ寝入り間際の雰囲気が好きなのか…。
似た感じですよね。
書きたかったのはあくびをする入江君とぬいぐるみに妬く琴子ちゃん。
ぬいぐるみたちは全て千葉の夢の国を思い浮かべてください。
あくびをする入江君って可愛いかなっと思っただけなんです。
明日明後日の深夜予約投稿しておきました。
そろそろ東京行く準備してきます!
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