「長編」
stay with me 【完】
stay with me 5
三人で会場まで来ると、直樹は琴子から受け取った招待状で受付を済ませた。
黒服の男性から恭しく案内されて豪奢な扉からパーティー会場へと足を進める。
想像の遥か斜め上を行く豪華さに、琴子は目と口をぽかんと丸くし、裕樹ですら軽く目を見張って会場を見渡した。
広い会場に知り合いなど当然いるわけがなく、誰に言われなくてもはぐれないようにしようと琴子と裕樹は互いにお互いの距離を縮める。
「…お兄ちゃん。」
「とりあえず大泉会長に挨拶しよう。」
不安げな弟の声に、兄として直樹は2人を自分の後ろを歩かせて、会場の奥、大泉会長を探した。
大勢いる招待客を見渡してみると、内輪だけといっていたこともあるのだろう裕樹くらいの子からそれ以下の子も多くいる。
想像以上の規模だったとはいえ、堅苦しいおじさんばかりではないことに琴子と裕樹の緊張も多少ながら緩和されたのか、大泉会長を一足先に見つけた琴子がこっそりと「そこ」と直樹に耳打ちした。
「大泉会長。」
直樹の呼びかけに談笑していた大泉が顔を上げる。
「おお、入江君。来てくれたか。」
「ご招待に甘えまして。弟たちも同伴させて頂きました。」
「ほぉ、弟さんか。」
「裕樹といいます。」
直樹の紹介にぺこりと頭を下げる裕樹を見て目を細める大泉。
その視線は次に裕樹の隣に並んでいた琴子を捕らえた。
「そちらのお嬢さんは…パンダイで会った娘じゃな。」
品定めをするような視線に琴子の体に再び緊張が走る。
「は、はい!相原琴子といいます。」
「琴子さんか…どうやらご兄弟じゃないようじゃが。…入江君のご婚約者か何かかな。」
「婚約者!そんなっ、滅相もない!私の片思いで、婚約だなんて!」
にこにこと朗らかに笑う大泉に、固まった体から一転して琴子は一気に赤らんだ頬を抑えてでれっとしまりのない顔をしている。
それを見て、直樹はわざとらしくごほんと咳払いをした。
「彼女は父の親友のお嬢さんで、私の母と親しくして頂いております。今日は母の代わって彼女が。」
「そうか、それは失礼したな。しかし素敵なお嬢さんだ。」
うんうん頷く大泉に琴子はそうですか?と嬉しそうにしている。
和やかに話し始める2人に直樹は一瞬得も言われぬ不安を感じた。
何を気に入ったのかは分からないが、大泉はいたく琴子が気に入ったらしく、先ほどまで話し込んでいた人々を気にすることなく琴子をそばに置いている。
悪いことではないものの、そろそろと頃合を計っていた直樹は大泉に声をかけようとした。
口を開こうとしたちょうどその時、「会長」と後方から声が聞こえる。
「おお。不破。」
琴子と話していた大泉はその声に親しげに顔を直樹の後方へと向けた。
「やっと来たか。入江君、こちらは経営戦略部の不破という。パンダイとのことも関わりがあるじゃろう。」
「不破です。よろしくお願いします。」
大泉と並ぶようにして直樹の前に立った不破という男は背が直樹より少し高いくらいでスポーツでもしていたのか精悍な印象を受ける整った顔の男だった。
「入江です。よろしくお願いします。」
差し出された手をとる。
日に焼けた肌や短く整えられた髪、不破から受ける外見的な印象は爽やかで申し分のないものであるのに、直樹にはどうもその目が笑っていない、それどころかどこか暗くよどんでいるように思えた。
昨日は急に発熱し、就寝したため更新できませんでした(涙)
今週末は出かけるので土曜日に書き溜められればいいのですが。
昨日より気分はいいと思いつつもあんまりまとまりません。
黒服の男性から恭しく案内されて豪奢な扉からパーティー会場へと足を進める。
想像の遥か斜め上を行く豪華さに、琴子は目と口をぽかんと丸くし、裕樹ですら軽く目を見張って会場を見渡した。
広い会場に知り合いなど当然いるわけがなく、誰に言われなくてもはぐれないようにしようと琴子と裕樹は互いにお互いの距離を縮める。
「…お兄ちゃん。」
「とりあえず大泉会長に挨拶しよう。」
不安げな弟の声に、兄として直樹は2人を自分の後ろを歩かせて、会場の奥、大泉会長を探した。
大勢いる招待客を見渡してみると、内輪だけといっていたこともあるのだろう裕樹くらいの子からそれ以下の子も多くいる。
想像以上の規模だったとはいえ、堅苦しいおじさんばかりではないことに琴子と裕樹の緊張も多少ながら緩和されたのか、大泉会長を一足先に見つけた琴子がこっそりと「そこ」と直樹に耳打ちした。
「大泉会長。」
直樹の呼びかけに談笑していた大泉が顔を上げる。
「おお、入江君。来てくれたか。」
「ご招待に甘えまして。弟たちも同伴させて頂きました。」
「ほぉ、弟さんか。」
「裕樹といいます。」
直樹の紹介にぺこりと頭を下げる裕樹を見て目を細める大泉。
その視線は次に裕樹の隣に並んでいた琴子を捕らえた。
「そちらのお嬢さんは…パンダイで会った娘じゃな。」
品定めをするような視線に琴子の体に再び緊張が走る。
「は、はい!相原琴子といいます。」
「琴子さんか…どうやらご兄弟じゃないようじゃが。…入江君のご婚約者か何かかな。」
「婚約者!そんなっ、滅相もない!私の片思いで、婚約だなんて!」
にこにこと朗らかに笑う大泉に、固まった体から一転して琴子は一気に赤らんだ頬を抑えてでれっとしまりのない顔をしている。
それを見て、直樹はわざとらしくごほんと咳払いをした。
「彼女は父の親友のお嬢さんで、私の母と親しくして頂いております。今日は母の代わって彼女が。」
「そうか、それは失礼したな。しかし素敵なお嬢さんだ。」
うんうん頷く大泉に琴子はそうですか?と嬉しそうにしている。
和やかに話し始める2人に直樹は一瞬得も言われぬ不安を感じた。
何を気に入ったのかは分からないが、大泉はいたく琴子が気に入ったらしく、先ほどまで話し込んでいた人々を気にすることなく琴子をそばに置いている。
悪いことではないものの、そろそろと頃合を計っていた直樹は大泉に声をかけようとした。
口を開こうとしたちょうどその時、「会長」と後方から声が聞こえる。
「おお。不破。」
琴子と話していた大泉はその声に親しげに顔を直樹の後方へと向けた。
「やっと来たか。入江君、こちらは経営戦略部の不破という。パンダイとのことも関わりがあるじゃろう。」
「不破です。よろしくお願いします。」
大泉と並ぶようにして直樹の前に立った不破という男は背が直樹より少し高いくらいでスポーツでもしていたのか精悍な印象を受ける整った顔の男だった。
「入江です。よろしくお願いします。」
差し出された手をとる。
日に焼けた肌や短く整えられた髪、不破から受ける外見的な印象は爽やかで申し分のないものであるのに、直樹にはどうもその目が笑っていない、それどころかどこか暗くよどんでいるように思えた。
昨日は急に発熱し、就寝したため更新できませんでした(涙)
今週末は出かけるので土曜日に書き溜められればいいのですが。
昨日より気分はいいと思いつつもあんまりまとまりません。
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